設計・施工などの資格や仕組みを知る
高度で精密な工業技術で作られ、厳重なチェックを経て市場に出される自動車でも欠陥車が発生します。住宅は敷地や予算、建築主の希望などの全てが異なり、様々な制約を受けます。昔と比べて工業化、規格化されてきたとは言え限度があり、組み立て工事は現場でしか出来ません。
そこでは手仕事がどうしても伴い、職人の腕の上手、下手もある。夏、冬などの季節の差や雨降りなどの天候の影響もある。むしろ、住宅は不具合や欠陥が出やすいと考える方が自然ではないでしょうか。
設計・施工などの資格や仕組みを知る
建築会社(大工)やハウスメーカーが、設計施工と言って広告や種々な営業活動を行っているが、建築事務所登録と建設業許可を受けていないと違法になります。
多くの場合、施工業者は建築事務所登録を受けていないのが現実です。
建築主から依頼を受けると、社内で図面を書いて建築事務所に名義を借りて確認申請を提出する方法を名義借りと呼び、確認申請に必要な程度の図面を建築事務所に外注、下請けさせる方法もあり、こうした建築事務所を代願事務所と呼びます。
大手ハウスメーカーでも、本社や大きな支店は建築事務所登録があっても、他は無いのが一般的で同じ傾向が見られます。
こうした仕組みで作成される少ない設計図は、住宅の性能や品質を表現することが限られ、トラブルの原因となることが多く、更に設計図通りに工事を確認し、問題があれば施工者に是正の指摘を行い、建築主に報告する業務を監理と呼びますが、名義貸しや下請けの監理者では実効性がありません。また、監理者を決めないと工事が出来ないことも知っておいて頂きたいものです。
大手ハウスメーカーなどの形式認定を受けた「工業化住宅」は個々の構造計算を省略できる制度がありますが、対象外の基礎工事を含めた資料公開、提供を拒否することがあり、消費者は品質や性能の確認が出来ないことになります。
建売住宅は確認申請書や構造計算書を購入者に渡す義務が法律上はありません。この為に、安全性の確認が最も困難となります。
資格のことも少し知ってください。設計士や設計者としばしば呼ばれますが、資格者としては「建築士」以外ありません。建築士資格者の中で設計監理を行ったり、施工を業務としたりの差があるだけです。
「建築家」と言う呼び方もあります。これも法律上の資格者名ではなく、現在の建築士制度が、国民、消費者に不利益をもたらす弱点があると考え、専門家としての理念と自律的精神に基づき、建築設計監理業務を専業(施工等と兼務しない)とする建築設計者たらんとする者の呼称で、そう考える人達の団体として日本建築家協会があります。
また、建築士と言っても、医者が外科や内科、小児科等と分れているように、得意分野は様々で、デザイン(意匠)、構造、設備と大別されており、一級建築士でも構造や設備が得意な人はごく少数派になります。
多くの場合は意匠の得意な建築士が他を統括し、事業所としては元請け事務所となり、他は下請け事務所、下請け業務を行っています。